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2008年12月14日

私は貝になりたい

以下、他のサイトに書き込んだ文の再掲載です。

gadogadoは,
映画「私は貝になりたい」を見ません。

旧作:フランキー堺さん主演のドラマは、少年時代、家族と一緒に白黒TVで見ました。
見ている間は、TVの前から逃げ出したくなりました。でも逃げられず、凝視していました。
見終わったら涙も出ず、ただ身体が硬直していました。

その後も、このときの経験は忘れられません。ストーリーの詳細は記憶から消えましたが。
難しいことばはまだわからない年齢でしたが、のちになって<理不尽>や<不条理>などなどの抽象的なことばと出会ったとき、その概念を理解する上で、このドラマを思い出すことが、ずいぶん役立ったと思います。

小柄な日本人戦犯たちが、裁く者に一切理解されないまま、巨大な米人MPに両腕をとられて、なすすべもなく死刑の宣告を受ける無力さ。
同時に、
上官の(つまりは天皇陛下の)命令ならば、部下は判断の余地すら無くこれに従わざるを得ない戦争の無情さ。

一つのドラマを見るだけで、たくさんの真実がわかってしまいました。
戦勝国/敗戦国の区別なく、ふつうの人の身の上にふりかかる戦争の不条理を根本から批判する作品です。

俳優自身にその<ふつうの理不尽さ>が理解できる時代ではないのかもしれません。
ざっと30代の俳優を思い出してみて、
あの時代の<ふつうさ>を表現できる役者がいるようには思えません。


貝のかぶりものをして番宣するような脚本ではないのです。





『房江 健一 さようなら

お父さんはもう二時間ほどしたら死んでいきます
おまえ達とわかれて遠い遠いところへ行ってしまいます

 もう一度会いたい
 もう一度みんなで暮らしたい

許してもらえるのなら手が一本 足がひとつもげてもいい
  おまえ達と一緒に暮らしたい
でももうそれも出来ません

せめて生まれ変わることが出きるのなら・・
いいえ お父さんは生まれ変わっても人間になんかはなりたくありません
 人間なんて嫌だ
 牛か馬のほうがいい
いや 牛や馬ならまた人間からひどい目に遭わされる
どうしても生まれ変わらなければならないのなら いっそ深い海の貝にでも・・・
 そうだ 貝がいい

貝だったら 深い海の底の岩にへばりついているから なんの心配もありません
 兵隊に取られることもない
 戦争もない
 房江や健一のことを心配することもない

どうしても生まれ変わらなければならないのなら
・・・わたしは貝に・・・(刑場鉄扉閉まる)

深い海の底の貝だったら
  戦争もない
  兵隊に取られることもない
  房江や健一のことを心配することもない

どうしても生まれ変わらなければならないのなら
・・・・・・・・・私は貝になりたい』

以上、橋本忍氏の脚本より引用



追記:BC級戦犯に対しては国家による補償が行われています。(十分なはずはありませんが)
国家の命令で兵役に就いたのですから当然です。
しかし、同じ戦犯となった朝鮮人兵士には補償が支払われていません。当時は同じ日本軍人であったにもかかわらず。
戦争の不条理と理不尽は今もなお続いているのです。



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Posted by gadogadojp at 13:00│Comments(4)映画
この記事へのコメント
そういえば貝のかぶりものをかぶって宣伝していたことがありましたね。
私も見ました。
意味の深い映画は、それ相応の宣伝の仕方はあるでしょうに・・・。

私はこの映画にかなりの関心を持っております。
しかし、どうしても私は役者の演技力というものを見てしまうのです。
役が上手であればそれで内容に入れるのですが、役が上手くなければそればかりを気にしてしまい、内容を見ることが出来なくなってしまうのです。
だから、私はフランキー堺さんが演じていたときの映像を見たいです。

私はこのころのことを全く知らないので、リアルに物語を確かめたいからです。
Posted by ☆らうっと at 2008年12月16日 02:48
韓国人に関しては戦後、反日国になってしまいましたから日本兵として戦ったことは社会的に非難されるものになってしまったでしょうね。
戦後の韓国人は彼らを理解しないとしても
、我々日本人は彼らに感謝と敬意を持たなければいけませんよね。
補償はぜひ支払われてほしいところです。
額の問題ではなくけじめとして。
Posted by ユウヒ at 2008年12月17日 18:09
らうっとさん、
旧作については、今見ても昔と同じように感じるのかどうか。
自分の記憶力には自信がありません。
でも、あのとき受けた衝撃が今も残っていることを考えると、やはりドラマのできばえは本物であったのだろうと、ま、キザに言えば感性は信じたいと思っています。
そしてそれを支えるフランキーさんの演技力もまた本物だったろうと。
正直、中居くんにはムリでしょうね。

旧作をご覧になれるチャンスはきっとくるのではないでしょうか。
Posted by gadogadojpgadogadojp at 2008年12月20日 17:36
ユウヒさん、
おっしゃる通り、誠意あるケジメは当然でしょうね。

朝鮮軍として、あるいは日本軍として、「日本の戦い」に参加させられた人々が、その後同国人によって指弾を受けたのかやむを得ないと赦されたのか、そのあたりの機微は、そういえば私は何も知りません。迂闊でした。
勉強してみます。
Posted by gadogadojpgadogadojp at 2008年12月20日 17:41
 
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