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2020年12月02日

紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ

紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ
「紀伊半島フィールドワーク」

国道42号線コース2
:すさみ〜道の駅すさみ


・紀伊半島を廻る国道42号線に沿って進むライトなフィールドワークです。

・決まり事と目次は最初のページをご覧ください。

大字(おおあざ)(あざ)は進行の目安になり、また地域の重要な歴史が潜んでいることもあるので赤字にしました。(すべての字を掲載しているわけではありません)

・お好きな地図(国土地理院地形図、googlemapなど)を伴侶にお読みください。




紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ

『すさみエビとカニの水族館』の正月ディスプレイ

紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ

アマヤドリ岩?


◉すさみ〜婦夫波(恋人岬)
すさみを出ると小さな浜があるが名前がわからない。工場だけがポツンとあり、尾花組生コン工場とある。ここで石灰石を採取しているわけではない。工場のすぐ先に大辺路への入口がある。後述の西浜から入っても良いが、ここから登った馬転坂(うまころびざか)付近からの眺望は圧巻らしい。白島隧道と覆道(シェード)が連続し、次の浜が見える。港はない。紀勢本線の馬越トンネル出口も近く、ほんのわずかな距離を国道42号と並走するが、鉄道の軌道は高くほとんど見えない。すぐ先にごく小さな集落がある。大字口和深字西浜。このあたりは山と海との距離がきわめて近いため、旧道らしき小道が崖の上に向かって通じているのが見える。崩壊続く崖なのでスリリング。

西浜の民家の手前に山に入る道がある。紀勢線がすぐ横に見えるギリギリ1車線程度の舗装道路だが、途中で地道の古道が別れる。熊野古道大辺路(おおへち)はここから海岸を避けて内陸に入り、タオ峠、和深川王子を過ぎたところから長井坂(長柄坂)が始まる。往時は枯木灘の眺望が良かったはず。見老津付近で古道はようやく海辺に戻る。
なお、タオについて、”『たわむ」を地元では「たおる」ということから、タオの峠という名前は「なだらかに起伏した峠」を意味しています。”と「わかやま歴史物語100」で解説されている。私は峠の別称がタオなので馬から落ちて落馬しての類の重複かと思ったが間違いだったようだ。

口和深の集落は和深川が削って土砂を溜めた細長い谷に沿ってある。集落は主に右岸(北側)にあって、左岸は丁寧に作られた水田。和深という地名は串本町にもあり、やはり川(これも和深川)によって土砂が堆積した海沿いの細長い谷の集落。さてワブカとは?フカはサメだろうと以前は思っていたが、地形の類似が気になる。地名がつけられた時点では入江があったのか。日本では他にワブカという地名は見つからない。なおアイヌ語でワは岸辺。また、口は和語で入り口、手前の意。紀南では口熊野のように”口”をよく使う。


・次の入江に行く前に国道は丘陵の間をすり抜けるように走る。その海側の丘陵に黒潮台という別荘地があり、空き地多数。山側にも開発途中で放置された別荘地がある。その放置された別荘地入口の向かいに駐車スペースがあり、海岸に行ける。干潮時には天鳥の褶曲(”フェニックスクリフ”)と呼ばれる奇岩が。泥岩砂岩互層がプレートからの圧力でほぼ180度みごとに屈曲している。未踏だしぜひ見たいが足元は悪いようだ。

黒崎海岸、その先はアマドリ海岸と呼ぶそうだが字でもなさそうで境目がよくわからない。いま天鳥と漢字表記するのはバス会社が停留所を漢字表記したからだと聞いた。人家もないそのあたりの風景は凄まじく、枯木灘という語感がぴったり。山肌も荒れている。広い駐車スペースあり。海岸に降りる階段はあるが歪んでいるし下まで届いていない。国道からは見えないが山側に珍しく池があり、今ここに太陽光発電パネルが建設中。昔のゴルフ場建設ラッシュ時の山野の荒廃のようだ。すさぶ海岸に荒んだ山野をさらに広げる策。
管理は大変だろうが、ありのままのこの荒々しい風景を好む人は多いだろうに。

・黒崎付近に橋が架けられていて、渡るとすぐ右側の空き地に密入国を警戒する看板が。その右の道を下ると磯まで出られる。車高の低い車は危険だと「釣太郎」の動画は教えてくれる。つまりここは磯釣りの重要なポイントだ。駐車スペースがあるので、車に乗ったまま波打ち際まで行けることになる。

天鳥(アマドリ)はもとはアマヤドリだという。ハングオーバー気味の断崖が国道に迫っていて必見。ここで雨宿り?目前の名切崎(波切りか)を小さく周回する遊歩道?旧道?は波浪に削られ通れなくなっている。
惜しい。


紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ




・すぐ先に『道の駅イノブータンランド・すさみ』がある。王と王妃はいるがどうにも活気がない。高速道路ができて、同じすさみの江住の道の駅に客が集中しているのだろう。しかし無人の休憩室のwi-fiはサクサクで便利。トイレも清潔。そこに長野県から九日かけて自転車旅をしている兄さんに出会う。どこで働いても空気を読めと言われるのが苦痛だと。わかる。別の人間になって働くとどうにかなったと言ったがこれはこれでモラハラ説教臭かった。反省。

・道の駅の山側には牛の飼育をしているくろしお牧場。国道からは見えない。和歌山県畜産試験場の施設だ。どこの市場に出荷しているのだろう。


・道の駅の先の風光明媚な位置に空き地があって、イノブータン大王が釣竿を持って立っている。大好きな場所。この奥の岩場は高浜海岸千畳敷と呼ぶそうだ。千畳敷に降りずに岬をぐるりと回り、恋人岬側で国道と合流する歩道がある。黒島隧道開通前の道か。



紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ

イノブータン大王とワタクシ:撮影は妻


・話は逸れるが、国土地理院の地形図で試みに”千畳敷”を検索してみると、青森県から八丈島まで17項目ある。他にも、前述の志原千畳敷のように検索でヒットしない呼称も多いだろう。”銀座”のようだ。最初に”千畳敷”を名付けた場所はどこだろうか。

・トンネルを抜けるとすぐ海側に駐車スペースが。黒島の展望所。黒島は沖ノ黒島と陸(おか)ノ黒島の二島で、前者にはソビエトという名の岩礁があり、後者は干潮時に砂州で陸と繋がる。ソビエトは漁師が名付けたとも言うがよくわからない。そびえたっているわけではない。近くの海面がコルホーズと呼ばれていたら一層歴史的郷愁を誘うのだが。釣りに好適な岩礁らしい。二軒の渡船宿が一日交代で客を運んでいると知ってそう思った。壮大な名前の割に足場が小さいのだろうけれど。


紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ

『BUSH』からの婦夫波:妻の撮影


・すぐ先が恋人岬。婦夫波(めおとなみ)または合掌波で有名。夫婦という語順でないことに注目。江戸末期の頃から悪化した日本社会のミソジニー化より前に命名されたのか。岬名も婦夫岬にすれば良いのに。ともあれ、陸ノ黒島で切り分けられた波が砂州上でめでたく両側から打ち寄せて出会うタイミングに訪問できればあなたがた夫婦いや婦夫の運は絶好調に違いない。
私たちは80%くらいの完全な波を見たぞ。

・恋人岬に『BUSH』というカフェがある。展望台と店の駐車場が共通。調理の腕が上がったので窓からの展望だけが売りの店ではもうない。ピッツア窯あり。子供ルームあり。
カップルはぜひカウンターへ。地下にアウトドア用品のセレクトショップがある。


紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ

見老津駅からの風景


◉見老津
・大字見老津(みろづ)のエリアへは前述の高浜からすでに入っている。
長井では長井(長柄)川の河口にこれも前述の大辺路の長井(柄)坂が終盤の下り坂を終えて海に出て来る。このあたりの美しい海岸の名称は不明。とりあえず見老津海岸と呼ぶ。

・見老津駅の立地がなんとも素晴らしい。全国でも有数の駅からの眺望ではないか。ホームから枯木灘とその先の太平洋がドカンと見える。あまりに海が青く光るので近景と海とがうまく同時にカメラに写らない。いや腕のせいか。

・駅舎内に『のんびり屋』というカフェができていて居心地がいい。コーヒーやケーキで一服を。雑貨もある。すさみ町が駅舎を借りているそうだ。良い試みなので応援したい。

・駅近くの国道海側、堤防から石垣を組んで建てた民家が佳い。元はうどん屋だったそうだと駅カフェのママさんから。そういえば長井川河口の先に見える複数の民家の石垣も精緻。(その先には白石神社があるが未踏。
)素晴らしい技術を持った職人がいたのかどこからか呼んだのか。うどん屋民家は今は使われていないようなので、私がお金持ちなら欲しい。住みたい。ママさんにそう言ったら、他にも時々そういう客がいるが、持ち主は売らないそうだと言われた。好事家は私だけではないことがわかった。

・長井に駐車スペースがほしいが、見老津港まで行けば停められる。
風光明媚な見老津港は戎島に守られた小さな良港。大正時代からカツオ漁が盛んになった。カツオ一本釣り漁船が47艘あったという記録がある。船も多く今も活気を感じる。

・集落内に鰹節製造の「匠創海」という会社があるが、カツオはベトナムで漁獲し、鰹節に加工して日本で削っているそうだ。ナマのカツオを使うのが大切だと。

・海外への出稼ぎや移住者はこの町でも多かった。地名のミロの由来はまったくわからない。同様の発音では弥勒しか思いつかない(紀北には箕六あり)が弥勒仏の伝承はないようだ。奥地では水晶を産したと聞くとイメージも良く、好きな場所だ。


紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ

見老津の元うどん屋


紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ

日本童謡の園の鳩ぽっぽ像


◉見老津〜『道の駅すさみ』
江住(えすみ)方向に向かう。
国道の『日本童謡の園』という表示で右折する。見通しが悪いカーブなので慎重に。曲がってから左へ行くと集落への道、まっすぐ右の道を進むと公園Pに着く。
駐車場は広く、WCや自販機。周囲は芝生でその奥は太平洋の絶景。

・1987年完成の『日本童謡の園』は見ておきたい。
1)たくさんの童謡の碑や像があり、近寄ると歌が流れる 2)公園からもその先の遊歩道からも景観が素晴らしい 3)荒れていない 4)先端までは車椅子でも通行可 5)先端には海岸に下りる階段があって、そこから陸繋島の江須崎まで徒歩で行ける 6)そこでは海遊びもできる(トビには注意) 7)江須崎は遊歩道で一周できるし灯台や神社も。大潮・満潮に注意。  
 なお江須崎にも公園にも飲食店はない。また、冬場は北西風が強いかもしれない。


江須之川漁港は国道に戻って走るとすぐの小さな漁港。現在はここを本拠とする専門漁師は一軒だけとか。しかも高齢。隣の江住漁港から来た漁師が教えてくれた。渡船を営む彼の持ち船のうち一艘はここに係留しているのだとか。ただし陸に揚げている小漁船が複数見える。砂浜から東の港へとぶらぶらと歩いたが人の姿は彼だけだった。


紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ




・まもなく『道の駅すさみ』。大きな複合施設でいつも賑わっている。高速道路終点(すさみ南IC)からまっすぐ降りて正面だから便利なのだろう。向かって右に『枯木灘鮮魚商会』の鮮魚店がある。とれとれの魚が持ち込まれ、切り身もあるが一匹ものなら捌きもしてもらえる。(※現在コロナで休業)

・道の駅店内には広い売店があり、野菜、イノブタ肉やジビエ、魚の干物など現地の食材が買える。土産物の種類も多い。奥には簡易なカフェスペースがあり、その奥に眺めの良い食堂がある。すべて夜は閉まっている。(道の駅のすぐ先にイノブタが食べられる『みき食堂』があるが未訪問。)総じて気が良いが、忙しいときは無愛想に感じるスタッフがいるのは紀南あるある。


・隣接して『エビとカニの水族館』があり、私たちはひいきにしている。マイナーな生き物がたくさん。入り口にはウミガメに餌もやれる。経営が苦しいのでぜひ来館を。→HP

・次号に続く。


紀伊半島フィールドワーク:国道42号線コース2:すさみ〜道の駅すさみ

『エビとカニの水族館』:妻の撮影



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