2007年06月09日
「タクシードライバー」は両刃の剣
「一番好きなアメリカ映画は何?」
と聞かれたら
『迷うなあ、『地獄の黙示録』かな『タクシードライバー』かな」
と答えるしかないgadogadoは、
したがいまして友人は僅少です呵々大笑。
「一人もおらんくせに」
「だれ?」
ここまで好きな映画だと、 ①わずかでもはずすのがおそろしくて ②つかみどころがなさすぎていやありすぎて
なかなか論評できないものです。Did'nt You?
(とはいえ、巷にひっそり暮らす元トラヴィスの、次のような経験はしておりません。たとえば鏡に向かって半裸でつぶやいたり、毎日腕立て伏せをしたり、拳銃が袖口から飛び出る工夫をしたり、モヒカン刈りにしたり・・
なぜならちょっとばかし年齢的に、ね。おまけに自尊心も、ね。)
だからまとまった論評はしたくないのですが、
でもそれでもどうしても言いたい事があります。
主人公
トラヴィスは狂気ではなく普通の青年だ。
そうでなくては、これはただのよくできたホラーでしょうが。
N.Y.は混沌と狂気の街ではなく、20世紀の普通の町。
「混沌」ほど混ざり合っていない。
「街」の文字が似合うのは、普通でない、ノーブルで希有な人物。たとえばチャップリンが演じるような。
1976年。世界的な反乱の時代が終わり、連帯の幻想が消えた時代の、だれもかれもアイデンティティを立て直さなければならなかった時代の普通の男、青年のお話。
それを、だれもまだ気づかなかったそのことを、すかあーんと提示して見せたマーティン・スコセッシ(監督)とロバート・デニーロ(主役)とバーナード・ハーマン(音楽)と、そしてジョディ・フォスターやハーベイ・カイテルやダイアン・アボットやその他の助演陣たちの傑作なお仕事。
(彼らの意図は、ベトナム帰還兵の失われた社会連帯感を描くことに過ぎなかったのかもしれないが。そうだとしても、より普遍性を帯びてしまったのだね。)
客のスコセッシを後部座席に乗せたタクシー内では、あまりの自分の矮小さに震える恐怖を感じたよねトラヴィスくん。ベトナム戦争でもきっと同じレベルの恐ろしさを味わったんだろうな。
オレは空虚だ。
「Anytime Anywhere 」とくりかえして底の浅いええかっこをしてみたり、女性をポルノに誘ったり、悪徳政治家の暗殺に失敗したり・・・・、何度イタイ思いを予感して期待して試みても繰り返しても、まだ自己確認できるほどの深い傷は負えないのさ。カイテルの演ずるヒモに半殺しにされたあと、さあどうかな、少しは満足感が得られたかな。
わかったわかったぜ。
この映画の論評は、書けば書くほど自分をも斬るのだ。
血も流れないくせに痛みだけは感じるのだ。
それにつけても14歳ジョディは。
Posted by gadogadojp at 00:00│Comments(0)
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