えな(胞衣)塚:湖西の遺跡その3

gadogadojp

2010年05月01日 20:00





胞衣(えな)とは、後産(あとざん)のことです。
胎児の胎盤や羊膜などですね。

wikiの胎盤の項には、詳しい説明がありますが、
生々しい写真も掲載されていますので、血の色に弱い方はご覧にならないほうがよいと思います。






ここ高島市三尾里にある「胞衣塚」古墳は、
フリヒメが継体天皇(オホド)を出産した際のその胞衣を埋めたという伝承のある塚です。
ことの真偽はさておき、
胎盤をわざわざ埋めて塚を築く、という発想自体を奇異に感ずる方もおられるかもしれません。







胎盤は栄養補給、免疫機能など重要な役割を果たしている器官だと考えられています。
胎児とは臍帯(臍の緒)で結ばれていますが、
HIVウィルスに冒された母親が出産した子であってもエイズ患者にならないことでわかる通り、
母の血液が直接胎児に流れ込まないような驚異的なシステムがそこでは機能しています。







後産の胎盤を母親自らが食べる動物は多く、
それは血液の匂いにつられて捕食者が近寄るのを防ぐのではないかという解釈もあるようですが、
胎盤はきわめて栄養豊富な母の<一部>とも考えられますし、
ロマンチックに言えば胎児を守ってきたとも言えるわけですから、
この動物のお母さんの行為は、どこか神聖な感もしてうなずけます。

この習慣は、人間世界にもあったようですが、
食べない場合も胞衣に特別な思いを抱くことが多かったようで、
日本列島でもすでに縄文時代から胞衣を納めた胞衣壷が出土しています。







要するに、
貴人の胎盤は特別扱いされていたとしても不思議は無い、ということです。
ただしもちろん、
この塚にオホドの胞衣が埋められていたかどうかの検証とは何の関わりもないことです。

ざっくばらんに申せば、この胞衣塚は、
このあたり一帯(三尾の地=安曇川デルタ)に数多く存在した円墳、または方墳の一つに過ぎないのでしょう。
しかしこのような伝承が伝わっていることじたい、
多くの示唆を与えてくれるものと考えています。
その示唆の行き着く先は、
学術ではなく虚構の世界なのでしょうが。




 このあたりはまさに澪(三尾)の地。安曇川水系の水路がそこかしこに走っています。
この水路の名は御殿川(ごんでんがわ)。



でも、
とこの後は全くの付け足し。
この場所に長居した私ですが、
ここは何となく不安を感じさせる場所でした。
それは、
立ち去りたいけれど、引付けられている、といった類いの落ち着かなさです。

もともと山と海の狭間の神戸で生まれたせいで、
広々したデルタや見通しの良い大きな扇状地には向かないのかもしれませんが、
それにしてもここは…
ここは、ナニカです。

わかりませんよね、この言い方では(笑)。


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