琉球フェスティバル大阪2011:後編

gadogadojp

2011年10月30日 10:00

引き続き、2011琉球フェスティバル大阪のレポートです。
前編はこちら。


仲田順市&蛍(じんじん)さん
企画は実現しませんでしたが、私はある催しで琉球音楽/舞踊を呼ぼうと考え、この方たちを候補の一組に想定したことがあります。
私は大阪に住んでいますから、大阪在住のグループを調べたのです。
仲田順市さんは大阪市大正区平尾で琉球民謡研究所を運営されていて、大阪市内で三線や島唄を習う人たちには良く知られています。
それだけでなく、イベント活動もしておられるのでした。

演目は「沖縄ゆめゆめ音頭」「美ら島沖縄」などでしたが、
私は観客であることから離れ、幻の企画が実現した時の主催者の目になって眺めていました。
仲田さんをもっと目立つ前の方で演奏してもらうことを考えていました。

仲田順市民謡研究所公式HP大正区平尾



下地勇さん
ひときわ大きな拍手とともに、長身の下地さん登場。
宮古言葉の曲ばかり歌われました。もちろんほとんど解読できませんが、彼の歌唱は一本調子に見えて実は感情表現が豊かですから、島への、島の人々への愛情がびんびんと伝わってきます。

「我達が生まり島(バンタガンマリズマ)」
『…公民館ぬスピーカーからやぐいばし国民年金収みふぃーる…』という歌詞に、ああ、と島の雰囲気を感じます。
飛行場以外まだ未訪問の宮古島ですが、この一節を聴くだけでもう何だか懐かしくなってしまいます。

「おばぁ」
知らない曲でした。『おじい』『ぴんざ(ヤギ)』『まーすにー(塩煮)』くらいしか聴き取れませんが、これは悲しい曲ですきっと。
それを把握すると、歌われている状況がちょっぴり想像できました。
自宅に帰って確かめます。
すると、秀逸なYou Tube動画を見つけました。wogbasinさん、リンクさせていただきます。
↓泣いてもいい方限定です。
http://youtu.be/d3D0WqOzmnk



京都琉球ゆう遊会
今年もエイサーは一組、「りゅうゆう会」の登場です。
小さな子たちも舞台の上で演技していましたが、それは「琉童会」と呼ぶのだそうです。なるほど。
大勢の演技の場合、全体に視野を広げているつもりでも、やはりどうしても特定の方を中心に見てしまいます。印象に残ります。
この会はHPをお持ちです。そこにはメンバーの写真が掲載されています。
悪用されそうもない小さな写真です。
数人のお顔とお名前(ニックネーム)が一致しました。
とくに○○さん、楽しそうな笑顔が印象的でしたよ。



石嶺聡子さん
改めてwikipediaで調べると、彼女のヒット曲「花」はCD50万枚売れたそうです。神谷幸一さんの姪にあたることもここで知りました。

けれど彼女が歌いたかった歌は沖縄風の歌ではなく、もっと欧米寄りの、あるいはワールドワイドな楽曲だったので、「花」が先導した沖縄イメージとのギャップに悩んだ、とwikiにあります。
私も以前何かでこの悩みを読んだ記憶があります。苦しかったでしょうね。

確かに豊かな声量で歌う彼女の歌声はひたすら伸びやかでストレート。島唄向きではないようです。
しかし今は「花」からの独立を果たし我が道を進まれているようです。
映画『東京タワー』のテーマ曲に詩をつけた「この世界に」でも、歌唱力が光りました。

けれどこの日は「花」も歌われました。正直、オリジナルCDの「花」はあまり好みではなかったのですが、その頃よりも情感が深まっていると思います。吹っ切れて得た深みでしょうか。
いえ、彼女をよく知らないのに軽々しいコメントは慎まなければいけません。
ただ、これだけは言えます。
私たちはどこかで産まれ育ち、誰かに育んでもらって今生きています。
その事実とそこで染み込んだ何かは、一人一人の、何ものにも代え難い宝物です。
ね、聡子ちゃん。
どしどし沖縄の歌も歌いましょう。

石嶺聡子さんのブログ。



知名定男さん+知名定人さん
10月下旬ですから、もう日が暮れていきます。ここ大阪城野音では、この時間になるといつもねぐらに帰る鳥たちが上空を横切ります。

「とーぬゆーからやまとぅぬゆー やまとぅぬゆーから アメリカゆー ひるまさかわたるくぬうちなー」と歌い始める「時代の流れ」を二曲目に選んだ知名さん。
ti-daブログの「たるーの島唄まじめな研究」のたるーさんによれば、作詞は嘉手苅林昌さん、作曲は花口説さんと「ウチナーのうた」(音楽の友社)には書いてある、と微妙ないいまわし。
林昌さんがいちばん好きだった歌を、と知名さんは紹介して歌われました。
10月9日が嘉手苅林昌さんの命日だったのです。

通い出して八回目になる琉球フェスティバルですが、無念なのは嘉手苅林昌さんと初代ネーネーズさんを琉フェスで聴く機会が無かったことです。
もっと前から通っている我が妻を、この点で羨ましく思います。
林昌さんのこの歌のCDは持っていますが、今となっては、知名定男さんによる心奥どこかに届く静かな歌声を通じて、生前の歌いっぷりを思い出した気になりました。
そう考えると、沖縄音楽をここまでヤマトにも広げた知名さんの名プロデュースぶりに、改めて感嘆。



大島保克さん
この日の大島さんの声は絶好調。
観客席から「ひばり!」のかけ声がかけられていましたが、石垣島白保の「ひばり」の屋号を持つ家に生まれた保克さんの本領発揮。
改めて彼の輝きながら空を切り裂き舞うような歌唱を再認識し、この日の私の耳にとって最高の時間になったのでした。

セイグァーが一瞬で大阪を沖縄に変えるなら、
彼は一瞬で大阪を白保の浜に変えることができます。

と、聞き惚れて、曲名を忘れてしまいました。
二曲目の「イラヨイ月夜浜」だけはさすがにおぼえていますが。
一、三曲目は何だったか…
でもその三曲目、何と太鼓にあの伝説の?太鼓パフォーマー、セイグァー登場。
衒気や茶目っ気たっぷりの、なおかつたいへんしっかりしたバチさばきを拝見し、
隣で歌三線を勤める大島さんの歌声ととあいまって、
恥ずかしながら涙腺がゆるんでまいりました。笑い泣き。

『太鼓というのは気合いを入れて叩くものだからね。普通の叩き方ではだめだ。太鼓がいいとこっちもウキウキしてくる 』twitterの登川誠仁botより。








パーシャクラブ with 夏川りみ
次はパーシャ、と津波さんの紹介が流れると、会場に驚くほど歓声が上がります。
ハロウィーンの真っ赤な帽子をかぶって新良さん登場。 Trick or Treat?と何度か呼びかけるが、ここは聴衆が十分反応できず。
だって琉フェス見に来る大阪の客はあんまり流行の西欧文化に精通してないもの(笑)
わけわからんまま声援おくってる。
赤い帽子を観客席に投げ、隠し持ったチョコレートをばらまくと、これはわかりやすくて観客は興奮。

パーシャの演奏は「海の彼方」で始まった。さすがの迫力で酒の入った観客の熱狂を引き取る。ギターもドラムスもいい音。
私はついサンデーさんを見てしまう。
そしてもちろん新良幸人さんの個性は会場全てをわしづかみ。掛け値無くわしづかみ。

二曲目の「ファムレウタ」からは夏川りみさんが登場。
次の「童神」まではりみぃがメインで歌います。りみぃがとても楽しそうに見えます。

「ファムレウタ」というタイトルは<子(ファ)守(ムレ)唄>。八重山口。
再び「たるーの島唄まじめな研究」で学ぶと、八重山口と沖縄語のmixされた歌詞だとか。その区別がほとんどわからない私には勉強になります。

「ファムレウタ」は新良幸人さんの作った曲。海が、島が、我が親の子守唄と重なる。
「童神」はもちろん古謝美佐子さんの曲。我が子の未来を祈る。
二曲のモチーフは異なりますが、<子供>繋がりに構成したのでしょうね。

次は再びパーシャがリード、「満天の星」で歌い上げる、「五穀豊穣」で盛り上げる。
今年の琉球フェスティバルのラストに向けて本日最高の盛り上がり。


新良幸人さんと夏川りみさんの共演はとても楽しめました。
新良さんは照れを超えて破天荒。
夏川さんは腹がすわったマイペース。
確かな音楽性に裏付けられたいいコンビに見えます。

パーシャクラブのブログ






フィナーレ
恒例の全員登場してのフィナーレ。
観客の耳は演奏や歌に向けられていますけれど、
目が向く先にいるのはセイグァー。舞台の前を踊りながら行ったり来たり握手したり。目が離せない。
おいおい舞台から落ちないか?
でも決して落ちない(笑)。

まずは全員で「安里屋ユンタ」、
次に知名定人さんと仲宗根創さんの若手で「嘉手久節~唐船ドーイ」、奄美から琉球へ。
さらに全員で「豊年音頭」、
と、観客のカチャーシー欲を十分満喫させておいて、

夏川りみ、下地勇、大島保克、新良幸人の四人がアカペラで一人ずつ仕舞い歌、
四人の声が会場を静かに満たす。
特に大島さんの声はそのまま天に届く。

おしまい。
満足満足。
コンサートとしての質の高い今回でした。

今年の琉フェスが終わったのはざんねんだけれど、
また来年があるさ〜。









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