『万引き家族』の提言

gadogadojp

2018年06月13日 00:37

『万引き家族』

→下記の文に加筆修正の上、「映画の水たまり」ブログに掲載しました。
(このページの文も後日削除します。)




パンフレットより



封切り直後ですので具体的には触れませんが、
どなたにも十分お勧めできる傑作でした。


私は是枝監督作品に相性十分な鑑賞者とは言えません。
好きなのですが、突き抜け不足を感じてしまうのです。

たとえば『海街diary』はその不満が小さく、満足度・完成度の高い佳作でしたが、
スケールは小さく、普遍性の広がりを感じさせない点が、私の好みとしては物足りませんでした。
親不在の三人姉妹家族が、異母妹のすずちゃんを新たな家族に迎え入れる物語で、
とてもステキな気分になれましたし、
家族とは何かを考えさせる作りにはなっているのですが、
現実社会で崩壊しつつある家族制度のはるか後方を歩く物語でした。

その点今回の『万引き家族』は、
ほぼ血縁関係のない(と推測される)6人が、
つまり、
いったんそれぞれの家族が崩壊した(と推測される)6人が集まって「家族」を形成していく物語なので、
明日の、未来の人間の「家族」像を模索していることになるのです。
また、
その6人の結合には万引きという犯罪が介在していますので、
今日の社会ではいつか必ず瓦解することになりますから、
新しい「家族」の接着剤としては何がありうるのかを考えさせ、
そしてその先の地平で、
家族はほんとうに必要なのかと問いかける作品でもあるのです。

さらに、
このような新しい家族も含めて日本の家族が一斉に崩壊しつつある現状に観客が向き合うことを期待し、
その直接原因や根本原因に思いをはせることを本作は暗に求めています。

これは是枝監督が、
本気で(映像作家として)<情況>に向き合う決意を表明した映画だろうと私は受け止めました。

パンフレットが秀逸です。ぜひお買い求めください。
最後にその中で、
本作には端役ながら大いに存在感を発揮した池松壮亮さんの文の一部を引用しておきます。

「今作を観て、はて是枝さんはどこまで行くつもりなのか、はたまた行かないつもりなのか、わからなくなってしまいました。」





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